音羽記者クラブの日記
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 写真集の出版を理由にした退学処分は無効だとして、19歳のグラビアタレントが桐朋女子高校を運営する学校法人桐朋学園を相手取り、処分の無効確認を求めた訴訟の判決が2月27日、 東京地裁八王子支部で行われ、訴えを棄却する判決があった。


 当然の判決なのだが、同日の6チャンネルのワイドショーで、「有名タレントがいたほうが広告塔になっていいだろうに…」という趣旨のコメントを口にしたタレントがいた。ワイドショーの大勢は、芸能活動をするならそれを認めている高校に行けばいいという意見だったので内心ほっとしたが、このコメントには、裁判が直面した問題の本質が表れているような気がする。


 というのは、世間の何割かは中高生徒のタレント化は、決して悪いことではないと考えているという現実である。タレントになって何が悪いのかと考えているのである。
 このタレントの範疇には、高校生でプロゴルファーになった石川遼君のような有名スポーツ選手も含まれる。報道によれば遼君は、プロになったことで10億円からの契約金を手にするという。そして遼君が広告塔になったおかげで、母校の杉並学院はいまや全国区の有名校である。


 中高生のタレントは、お金を稼いだり、学校の広告塔になったりする貴重な資源だから、決して悪いことではないと考えているのである。
 これに対し、中高生徒のタレント化に反対する人たちは、中高生は勉学にいそしむ年代であり、タレント活動は決して好ましくはないと考えている。商業主義の資源というとらえ方など、とても許されるものではない。


 グラビアタレントに訴えられた桐朋女子高校は、断固として生徒の芸能活動を認めない方針を貫いた。
 訴えたほうのタレントは、明らかに売名行為であるかに見える。というのは、このタレントは裁判中も写真集やDVDを新たに出している。たまたま出した写真集が原因で退学になったというわけではないようである。
 また判決後、このタレントは、「(中高一貫校で)5年半も通った学校に戻って卒業したいという気持ちを裁判官に 理解してもらえなくて、とても残念」とのコメントを出しているが、中学から5年以上も在籍していた生徒なのだから、同校がいかに厳しく芸能活動を禁止しているか、校風として身にしみて理解しているはずである。
 この裁判は明らかに、学校の方針に挑戦することで名を売っている。本人の気持ちとは別に、売名することで得をする周辺の力が動いているとみるのが普通だろう。


 もしそうだとすれば、一部の世間から批判されるのを覚悟のうえで、退学処分を撤回しないで裁判に臨んだ学校側の見識は大したものだといっていい。一時的には、裁判をすることで売名行為に手を貸すことになるだろうが、長い目で見れば桐朋女子高校の毅然とした方針は社会に周知されることになる。
 方針がぶれることのない、今どき珍しい学校である。


 ただ、この芸能活動を認めないという方針は、桐朋女子高校を運営する桐朋学園すべての学校の方針ではない。
 学校法人桐朋学園は国立市にある男子部門、調布市仙川にある女子部門、音楽部門の3部門から成り立っていて、男子部門の桐朋高校は都内有数の進学校、音楽部門は音楽学部の桐朋学園大学としてあまりにも有名である。


 その中にあって女子部門は、共学の桐朋幼稚園から桐朋小学校、女子だけの桐朋女子中学校、桐朋女子高校普通科、そして桐朋学園芸術短期大学と、幼稚園から短大までそろっている。そして共学の桐朋小学校の男子は、国立市の桐朋中学校へ、国立市の共学である桐朋学園小学校の女子は桐朋女子中学校へと進学する。
 また同じ調布市仙川には、音楽部門の桐朋学園大学音楽学部の下に桐朋女子高校音楽科(共学)があるが、これは女子部門の普通科とはまったくつながりのない別個の運営となっている。


 つまり今回訴えられた桐朋女子高校は、厳密には普通科のことで、同名の音楽科とはまったく方針の違う高校である。
 したがって、芸能活動を禁じている普通科の方針は、同じキャンパスに隣接する音楽科と一線を画するために、あえて厳密に打ち出しているのかもしれない。


 桐朋学園といえばやはり音楽で名をはせているので、外部からは普通校の存在は分かりにくい。
 しかし女子部門は、沿革の経緯から「桐」を校名にしていることからも分かるように、旧東京教育大学、現在の筑波大学と深い関係にある。したがってその教育方針はかなり厳格で意欲的。具体的には心身の健康と個性を伸ばすことにあり、進学よりも生徒の活動と実践に重点が置かれている。


 良妻賢母型が多い女子校の中で、この女子部門の教育方針は社会性があり、実際に同校の出身者には社会の第一線で活躍する人が少なくない。
 その教育の過程で、芸能活動を禁止するというのも、一つの方針として理解できないものではない。私学としては、当然認められるものである。


 今回の裁判はむしろ、中高生のタレント化を容認する軽い社会風潮の中で、しっかりした教育を実践する学校が、まだ存在することを示したことに大きな価値がありそうである。少子化時代の中で、あえて商業主義の挑戦を受けて立った桐朋女子高校の見識に敬意を表したいものである。




   
    
    

   
        
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